マイリトルポニー21話の感想と西部開拓に関する考察 : アニメで犬ばかり見てるアニメで犬ばかり見てる

    マイリトルポニー21話の感想と西部開拓に関する考察

    • 2013/09/07



    英語版原題は“Over a Barrel”

    このアップルーサの決闘は字幕を作ってないエピソードなので記事を書いたことがなかったんですが、いろいろと考えさせられる部分があるのでまとめておきます。

    マイリトルポニーだけでなくポカホンタスとアバターのネタバレがありますのでご注意ください。

    西武開拓を描くということ

    20130906_232819.jpg


    もともとカートゥーンで西部開拓ネタを扱うことは多くありました。その中でもインディアンによる襲撃は定番であり20世紀中頃のカートゥーン作品で多く見られます。

    しかし1980年代後半からネイティブアメリカンの権利についての意識の変化が進み、90年代のカートゥーンになるとあまり見られなくなりました。

    典型的な白人対インディアの戦いを描いた作品の中に1953年に公開された“Tom Tom Tomcat”がありますが、現在このアニメはアメリカのカートゥーンネットワークで放送禁止になっています。(日本では放送されていました。)

    このように、インディアンが開拓者を襲うという表現はほぼ見られなくなっています。私が覚えている中で、インディアンがステレオタイプの野蛮人として描かれているのは1991年の「アメリカ物語2:ファイベル西へ行く」が最後です。

    一方で、ネイティブアメリカン側に配慮したストーリーのアニメが増えています。有名な例がディズニーの「ポカホンタス」です。

    さらに、先ほど上げたアメリカ物語2の続編「アメリカ物語3」(1998)ではネイティブアメリカンが移民により迫害される歴史に焦点を当てた、まさに真逆の描かれ方に変わりました。

    現在は過去のカートゥーンに見られたような野蛮な原住民はいなくなり、白人が侵略者であったという歴史を反省して原住民にもフォーカスをあわせたストーリーが主流です。


    ここで本題に戻りましょう。
    マイリトルポニーの場合、バッファロー達は被侵略者として描かれています。

    開拓者のポニーと、土地を守りたい原住民のバッファロー。その両方の考えを描くことで、バッファーローの襲撃を単なる野蛮人の襲撃としない。まさに典型的な近代的配慮です。

    本編では最終的に「分かち合う精神」で開拓者と原住民は和解しました。

    ですがこのストーリーはネイティブアメリカンを題材にする上であまりにも安直すぎます。

    西部開拓史の特殊な点は、近代のアメリカで現実にあった話を題材にしていることです。だからこそ残酷で傲慢な史実が存在し、それを描くからこそこれまでの差別的だったネイティブアメリカンの描き方へ決別を果たしているのです。

    しかし、このマイリトルポニーでの終わり方は、両者が自身の利益を無視して妥協するという、第三者視点の単純な願望でしかありません。

    ポカホンタスでは悪を倒して誤解を解くことで両者が和解し、アバターでは開拓者の全面敗走で原住民が勝ちます。

    現実にあった争いが複雑であったからこそ、単純な分け合いで解決する題材としては重すぎるのです。




    ピンキーの踊りと歌について



    ピンキーが踊っているシーンで客が微妙な反応をしていること、さらにアメリカ人の視聴者がこのダンスを「エロい」と捉えるコメントが多くあります。
    waribikikens.jpg
    18世紀の高級娼婦(soiled-doves)


    この日本人にはわかりにくい概念については旧西部文化が関係しています。

    18世紀の西部開拓地にある酒場のダンサーというのは、西部に出稼ぎに来た娼婦がほとんどでした。

    西部開拓地の酒場にいたダンサーが全て娼婦であったわけではないでしょうし現代では酒場のダンサーは健全な存在です。しかしピンキーの衣装は西部映画におけるステレオタイプの娼婦であり、アメリカ人が見れば不健全な姿とも捉えることができるわけです。

    そのためファンの間では「ピンキーが売春婦の姿をして踊っていたから客が引いた」という考えがあります。


    では脚本家がそれを意図して売春婦姿のピンキーを描いたのか?それについての答えはNOです。

    ピンキーが踊っているのは18世紀に流行した「カンカン」であり、マイリトルポニーはそれを模倣したに過ぎません。しかし18世紀の西部では売春婦がその姿でもあったということです。

    20130907_000930.jpg

    個人的にはピンキーのダンスが卑猥には思いませんし、西部劇のダンサーが出てくるアニメは他にもありますから。



    そしてこの歌でレインボーダッシュが翼を立てているカット(上の動画の0:20あたり)があったためWingbonerというネタが生まれました。

    なぜレインボーがWingbonerしてたかはこれでわかりましたね。でも上のWingbonerの記事を読んでみたら、すでにこの単語って英語圏のブロニー界隈で死語になりつつあるんですね…。


    馬が列車を引く表現について

    20130907_001536.jpg

    蒸気機関車をわざわざ馬が引くシーンがありますね。なのに次に機関車が登場したときは普通に走ってます。これは製作者にどういう意図があったのか解説しているのを見たことがないので正確なことはわかりません。

    2013y09m07d_002103084.jpg

    史実にあった話を参考にするなら、西部開拓時代の鉄道建設でトンネルが出来るまで機関車の山越えに馬を使っていたという話があります。もしかしたらそこからインスピレーションを得たのかもしれません。

    それか、当初は馬が列車を引くおもちゃを企画していたのかもしれません。

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    シーズン2からは上のピンク色の汽車がアニメに登場するようになりました。
    私は汽車の変更についてはこのおもちゃ説が有力だと思います。

    日本語版の翻訳について

    今回は特別変な翻訳がいくつかあったエピソードでした。

    一番ヤバかったのが「おもらしラリティ」

    amarec20130820-124623.jpg

    ここは英語だと“Don't wet widdle Rarity make you all saddy-waddy.”と言っています。

    “widdle”はおもらしという意味もありますが、ここではLittleを幼稚語にしたもので、本来は「ラリティちゃんの言うことでいじけちゃだめですよ」という意味です。

    widdleを直訳しておもらしにするのは誤訳でもネタとしてはめちゃくちゃおいしいのでそれはそれで良いです。うん。

    あとwiddleにおもらしの意味があるのは恐らくLittleから派生したものなのでこう訳すのも絶対に誤訳とは言い切れないのかもしれません。

    ただ誤訳がほかにもあります。

    amarec20130907-004836[01]

    この「知恵を借りましょう」の部分は“I think they get the idea, Chief.”と言っています。

    本来は「彼らもわかったと思います」という意味で、長引く族長の話に区切りをつける台詞です。ここの冠詞が付いたthe ideaは行為の結果であり一般的に使われる発想とは別の意味を持ちます。


    20130907-005634.jpg

    今回の誤訳の中で一番不可解でわかりやすかったのがこのシーン。

    このへんは平らな土地しかない」と言っているのに画面には岩場が映ってますから明らかに変です。

    英語でも“It's the only flatland around these parts!” 「ここしか平らな土地は無い」と言っています。

    翻訳者は台本だけを読んで画面を見ずに翻訳を行ったのか、今回のエピソードは確認する暇も無いほど急いでいたのでしょう。翻訳者は激務だとよく聞きますが、マイリトルポニーももしかしたら…。
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    ユトラル

    ブログには初めてのコメントとなります。よろしくおねがいします。

    自分がきっと知ることはなかったであろう、作品の背景や憶測など
    とても面白く読ませてもらってます!
    特にピンキーの歌なんかは、スパイクといっしょに拍手したいくらいなのに
    観客の反応がいまいちなので、とても不思議に思ってました。


    翻訳者さんの現場って激務なんですね。
    作品のニュアンスをどうやって日本語に落としこむのか、頭をひねることも多そうです。
    • URL
    • 2013/09/07 02:05

    anonymous

    お漏らしラリティはさすがにヤバイですね。しかし実際日本版を見てみたら、あんまり違和感が無かったのが一番怖い。

    猫パジャマAJみたいにならなければ良いけど。。。いや、個人的には。。。

    • URL
    • 2013/09/08 22:36

    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    • 2013/09/09 00:14

    anonymous

    私はピンキー とそのほかのポニーたちが考えなしに分け合おうって言っているんだと思われて感心しない顔になっていたんだろうかと思っていました

    翻訳の会社が実績あるところとはいえしくじるところはしくじるもんですね・・
    • URL
    • 2013/09/09 17:18

    MASA

    >ユトラルさん >anonymous
    >私はピンキー とそのほかのポニーたちが考えなしに分け合おうって言っているんだと思われて感心しない顔になっていたんだろうかと思っていました

    本来の脚本的にはそっちが正解でしょうね。「俺達は真面目に話し合ってるのにこいつは何歌って踊ってるんだ」って感じで。

    >anonymous
    >猫パジャマAJみたいにならなければ良いけど。。。
    猫パジャマも…だめ…?

    >このコメントは管理人のみ閲覧できます
    限定コメントに返信するのは忍びないですがまさにその通りだと思います。
    当時の開拓者は高度な文明こそ正義と信じ植民地の開発を行っていた面があります。
    人によって違う正義の概念は巨大であればあるほど妥協を許しません。
    時事問題になりますが現在アメリカは正義の名の下、シリアへの軍事攻撃を計画しています。
    アメリカ人が犠牲になる前に化学兵器を封印することを目的としていますが
    アメリカ人のためにシリア人が死ぬことが許されるのは、例え多数派であっても完全な正義ではないでしょう。
    • URL
    • 2013/09/11 21:15

    anonymous

    MASAさんは博識ですね。カートゥーンでのインディアンの描かれ方の変遷や娼婦の話、ためになりました
    アメリカ物語を見てみたくなりました
    • URL
    • 2013/09/16 17:16

    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    • 2015/05/13 13:01

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    MASA

    Author:MASA
    ディズニーなどの海外アニメが好き。特にバルトが大好き。本当に犬しか見てないわけではないけど動物キャラが好き

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